小ネタ3 「早すぎた進化」

天才蟲学者ヨハネス・滝川が人類を新たな段階へと進化させるべく生み出した<寄生蟲ムギャオー>。<寄生蟲ムギャオー>を寄生させると、脳の下垂体が刺激され、脳全体がアンテナとしての役割を果たすようになり、他者の思考を読めるようになるのだ。
新たなる認識を得て、人は神への更なる一歩を踏み出すだろうと期待されていた。
しかし、検体の60%が蟲を受け入れる事ができたのだが、意志の弱いものは他者の心の声に耐える事ができず、自殺を計ったり精神錯乱を引き起こしたりした。
その上、外界からの声を無視するよう脳を制御できない人間達が一箇所に固まるとそれだけで命に関わる事態になりかねない事も判明。
蟲を寄生させた者達が近寄った場合、互いの声を脳内で認識する事で言わばオウム返しのように同じ言葉を発する事になり、またその言葉を発している自分を意識する事で声が倍加、脳同士がハウリングを起こしてどちらか一方が過負荷に耐えられず気絶するか死ぬまで暴走してしまうのだ。<樹黄団>の<枝>*1にして大脳生理学者でもあるロレンツォ・N・メルカダンテが実験を停止し、サンプルと現段階までのデータだけを残して全てを破棄しようとした所、ヨハネス・滝川は独断で実験を継続。
蟲の卵は恵栖二市固有種であるイエカを特別に調整したエスニマダライエカを媒介として人体へ伝染するが、調整が不十分であったため、生命力が低く、繁殖力も持たない。
本格的増産は当然調整が完了してからの予定だったため、たいした数も揃っていないのだが、追い詰められた滝川は実行を決意する。
そして街に鼻垂れるエスニマダライエカ。
事ここに至って、事態の露見と<結社>が表に出る可能性を危惧したロレンツォは恵栖二市を業火で焼き尽くす事を決断する。
結社の下級構成員であるPC達はエスニマダライエカを駆除する薬品を流し、感染者たちを全員確保して処理を施す事を命じられる。
期限内に全ての片をつけた上、逃走した滝川を捕縛しなければならない。
それができなければ恵栖二は地図の上から消えることになるだろう。

*1:<葉>、<枝>、<幹>、そして最高意思決定機関である<根>に至るまで結社内での階級は樹の部位に例えられている。<枝>以下は、通常<手>とも呼び慣わされる