memento mori

訃報が届いてから、どこか落ち着かなかった。
心の中のもやもやをどう名状していいのかわからなかった。
これを哀惜、と呼ぶのだろうか。
だが違う気がする。
無意味とは知りつつも、その正体が気にかかった。

悲しみか
勿論、悲しんでいるのは確かだ。だが其れだけではない。
寂しさか
男には執着というものが欠けていたため、寂しさはあまりなかった。
喜びか
別に遺産が手に入る訳ではない。それどころか色々と大変なだけだろう。

そうか。

そこで男は気づいた。
自分の中にあって、首が傾ぐほどに重くのしかかってくるものが何か。


疲労だ。

悲しみや寂しさ、そういった普通の人間存在であれば第一に感じてしかるべきものよりも先に、ただ連絡を受けただけでまだ始まったばかりだというのに、疲れていたのだ。

男は、生き疲れていた。