キャラ設定後編4

終わりました。
これで完結です。
どうみても終わってますよね???

さて、能力値ふるかー。

後編4

 ジョージと出会ったのは寒い冬の日だった。組織の殺し屋となったマシューの連絡役として引き合わされたのがジョージだった。当初マシューは、この小ざっぱりとした洒落者に、何の感慨も抱かなかった。遠くない将来、どこぞの裏路地で野垂れ死ぬのが自分の末路だろうと信じていたマシューには全てがどうでもよかった。
 組織にとってもマシューは扱い辛い難物だった。厳しい仕事ばかりを与えたのだが、その度に見事成功し戻ってくるにつけ、マシューの名は上がっていった。悪名の方が。およそ組織の中で彼の人望は0に近かった。いやむしろマイナスだと言っても差し支え無いだろう。味方を省みずに独断で行動し、命乞いをする者にすら容赦無く鉛弾をぶち込む。結果として誰もが彼と行動を共にするのを嫌がるようになり、組織としても捨て駒以外の使い道を見出せなくなった時だった。ジョージが間に入り、マシューを用心棒にするように進言したのだ。ここまで高まった彼の名声を利用しない手は無い、また、いざというときの為に切り札として温存しておくべきだ、と。上層部も彼の功績と名声を斟酌し、ジョージの提言を受け入れる。体の良い飼い殺しであったが、マシューは頓着しなかった。周囲の都合などどうでもよかったのだ。
 それから、マシューが用心棒を務めるバーにジョージが頻繁に顔を見せるようになった。仕事中なので一応酒を飲まないマシューを尻目に自分はグラスを傾けながら埒も無い話を一方的に喋り捲って帰るという感じだった。当初は聞き流していたマシューだが、毎日聞かされている内に、相槌を打ち、意見を言うようになり、会話が成立するようになっていった。その過程は非常にゆっくりとしたものだったが。結局、マシューも孤高を気取っていながらその実、人との交わりを求めていたのだろう。二人は急速に親交を深め、互いの身の上も語り合う仲になった。マシューが、ジョージは幹部の一人の私生児である事を知り、またジョージも、マシューには肉親と呼べるものが年の離れた姉一人しかおらず、10年以上顔を合わせた事が無い、という事を知ったのもこの頃だった。
 「このジョージ・オコンネルには夢がある!」ジョージは深酒をすると自分の夢を語りだす癖があった。この話も何度聞かされたものか、と思いながらも茶々を入れずに最後まで耳を傾け、脱線したら先を促すように話を戻したりもするマシューだった。自分には夢なんてものは無い。そんなものはもう何年も前にあの寺院が焼け落ちた時にいっしょに燃えてしまった。燃えカスだって残ってはいないだろう。最早、短い余生を送っている気になっているマシューにとって、さほど年の離れていないはずのジョージが自らの夢を持ち行動している、というのは微笑ましくもあり、また羨ましくもあった。「俺は必ずのし上って組織の頂点をとる!その時はマシュー、おまえにも存分に働いてもらうぞ!」「ォゥィェー、ボース。まずは誰から片付けりゃいいんだー?Hehe」酒の席での戯言ではあるが、ここ数年感じたことの無い安らぎがあり、彼もまた、ジョージのために働くのも悪くは無いかと思うようになっていた。いずれどこかで朽ちる身だ、こんな自分でも誰かの役に立つのなら動かないでどうする?例えそれが殺しであったとしても。
 
 そのジョージが今目の前で垂れ下がっていた。辺り一面に血と臓物の切れ端をぶちまけ、四肢を力なく投げ出し、目はとうに虚ろである。誰がやったのか?問うまでもない、無論自分だ。確かに最初に一太刀入れたのはあの女だっただろう。だが、苦しむ友人を救う事無く、その内臓を食い荒らしたのは誰か?歓喜に震え、愉悦の雄叫びを上げたのは誰か?かつて夢を語っていた、その夢を手助けしようとすら思っていた友を物言わぬ屍に変えてしまったのは誰か?自分以外の何者でもなかった。最初はわからなかったじゃないか!マスクをつけられていたんだ、ジョージだってわかる訳が無い!だから仕方無かったんだ!そう自分に言い聞かせる。だが、心のどこかで冷徹な声が聞こえた。でも、人を食った事にはかわりないだろう?それに、血を舐め、臓物を味わっている間に感じていたのではないか?彼との繋がりを。彼の息遣い、臭い、体格、その他の情報から知っていてもおかしくは無いだろう?結局おまえは喰いたいから喰ったのだ。いや、彼だからこそ喰ったのではないか?この化け物が!
 自らを苛む心の声に押しつぶされそうになり、マシューは駆け出した。倉庫の一つしか無い出入り口に。閉じられた鉄扉に体当たりをすると、扉は撓んで外に向かって弾けとんだ。倉庫の外でたむろしていた信者たちを片手で跳ね飛ばすと、宵闇の中、林の中に消えていった。
 ツナギの女が口を開いた「ありゃ、出てっちゃいましたよ。追わなくていいんですか?」問われたもう一人が首を横に振って答える「叔父様は、たった一人のお友達を亡くされて非常に悲しい思いをされてるんですよ。誰でも一人になりたい時があるでしょう。今はそうっとしておいてあげましょう。明け方前くらいになったらお迎えに行ってもらえますか?一応、ペイジとジョーンズも連れて行ってください」さて、ここを片付けないといけませんわね……と腕を組んでジョージの死体を見やる。「ベス、残りを食べてしまってもいいですよ?」ベスと呼ばれたツナギを着た女は、ちょっと見せてくださいね、と断りを入れてからジョージの物言わぬ骸の胸に指をかけて開胸する。「うーん、こりゃダメですよ。見てください、肺が真っ黒です。気管支系は全滅ですねー。こんなの食べたら癌になっちゃいますよ。多分、血だって不味いし、他の肉だって煙草の臭みがついて不味くてしょうがないと思いますよ。処分して肥やしにするしかないですかね。」そういってから首を傾げる。「マシューさんはよくこんなの食べましたねえ?」「それが友情というものですよ」極上の笑みを浮かべながら。



 −なんか続きそうだけど本当に終わらないので完−