1−6

うーん、えすにんの名前って何だっけかなぁ。
前のコンベの時にもらった資料とか見れば載ってるか。
苗字が矢部野で、名前は彦なんとかっていったような気がするんだけど・・・・・。
まぁ発掘せねば。

ちなみに今回はほとんどが説明文なので面白くありません。
こういうのはもっと削らないと話のテンポが悪くなるんだろうなぁ・・・・・。


1−6.鳥籠
 内地に程近い地域はスラムの他所と異なり埋立地ではない。その然程広いとは言えない区画にスラムの富が凝縮されていた。所謂高級住宅街はスラムの他の地域と切り離されており、出入り口にある詰め所には自警団のような半端な連中ではなく正式な訓練を受けた衛士たちが警備についている。
 代理人の男と僕たちはその区画へと足を向け、入用門にできていた行列の最後尾に並んだ。列には荷車に野菜を積んだ商人やスーツを着込んだ男、けばけばしい衣装の娼婦や男娼など様々な人種が目に付いた。一様に言えるのは、彼らがスラムの中でも清潔な格好をした者達ばかりであり、ぼろを身に纏った浮浪者や薄汚い浮浪児などは列に並ぼうとしても端から衛士たちに棒もて追いやられてしまう。僕たちのところにも衛士が肩をいからせながらやってきたのだが、代理人の男が一言二言口を聞き鞄から書類を出して彼らに提示すると納得したのか去っていった。たっぷり1時間は待ってからようやく僕たちまで順番が廻ってきた。審査の方は男に任せて、僕は物珍しそうに周囲を見回しながら、詰め所と高級住宅地の警備に穴が無いかを探した。いつか脱出する日が来るかもしれないから。でも、予想通りと言おうか、警備は非常に厳重だった。内地とスラムを隔てる関所よりもこちらの方が露骨に敵意を剥きだしにしている。3メートルもの高さがある分厚いコンクリートの壁の上には等間隔に4機のロシア製重機関銃、通称“トロイカ”が暴徒を一掃すべく銃口を巡らせている。衛士達が肩から吊るした機関銃の先端から中ほどまでに並んだ分厚い刃、“チェンソーバヨネット”は重油の涎を垂らしながら犠牲者を求めている。人間などは一撫ででミンチになるそうだ。
 その邸はひっそりと建っていた。高級住宅街はスラムの他所に比べると非常に静かな地域なのだが、邸のそれは静寂ではなく鳥の羽も重たくなりそうな沈黙だった。警備の厳重な高級住宅街にあってなお、堅牢な、城砦の如き威容を誇っていた。
 競売代理人は僕達を連れて裏口に周り、通用門の脇のインターフォンを押して名を名乗ると用件を伝えた。やがて門が開き、陰気で地味な服装をした男が顔を見せた。彼は僕達を一瞥した後、代理人を睨み付け「今度のは大丈夫だろうな?連続で変なのを遣すとお前だけでなく、俺たちの責任にもなるのだからな」低い声で脅しつけた。「ああいや、今回は大丈夫ですよ。ええ、顔だけじゃなくて賢そうなのを選んできましたから」代理人は手の甲で汗をふき取りながら精一杯の愛想笑いを浮かべて返答した。まぁいいだろう、陰気な男はそう言うと代理人から領収書を受け取った。「前回より随分かかってるじゃないか」領収書に記された金額を確認すると、男は眉を顰めた。代理人は冷や汗を流しながら必死に取り繕った。「最近はライバルが多くて、安い値段じゃそれなりのものしか買えないので・・・・・」「まぁいい。この二人次第だからな」 ちょっと待てと言い置くと、陰気な男は一旦中に引っ込んだ。しばらくしてから分厚い封筒を持ってきて代理人の男に手渡すと、代理人はその場で封筒を開け中の金額を確認し始める。男は無表情に僕たち二人の方へ向き直った。「さぁ来るんだ。ご主人さまに会う前にその汚らしい格好を何とかしなくてはな」
 そして僕は邸の敷地に踏み込んだ。この時から8年間、16になるまで僕はこの邸から出る事は無かった。