すきるあっぷ

トイレで用をたしていると、視界の隅に黒いものが映った。
Gだ!
慌てず騒がずトイレを済ますと、トイレットペーパーを何重にもとって、右手に持つ。
Gはまだ動かずにその場で触覚を蠕動させていた。
物陰にいたので、Gの前の物を動かないように固定する。
そして、Gの背後からトイレットペーパーを持った手を近づけて……。
抑えた、と思ったのだが右手を上げてみるとティッシュの中にGはいなかった。
手を下ろした時に、トイレットペーパーの下から危うく難を逃れたらしい。
物を固定したと思ったのだが、まだ隙間があったのだ。
そのものをどかす。
他にも邪魔な逃げ場になりそうなものをどかす。
今度こそ隅においつめ、万感込めて右手を振り下ろす。
手ごたえは微妙。
右手を上げ、トイレットペーパーを見やるとそこにはGの猥らに蠢く腹部が目に入った。
穢れを感じたので即座にトイレに放り込む。
放り込んだ瞬間、トイレットペーパーから逃れて便器から出ようとしたGだが、間髪入れず放出された水に流されて奈落へと堕ちていった。
勝った!!
科学の勝利だ!!

ついに生きたまま掴んで処分する事に成功したのだ。
無論まだスタートラインについただけである。
この先、トイレットペーパーなどという文明の利器に頼らずとも、この親からもらった肉体のみで黒い悪魔を殲滅できるようにならねばならないのだ。
無論いきなり徒手にて相手をするには荷がかち過ぎている。
徐々にトイレットペーパーの量を減らし、やがては……徒手空拳で黒い悪魔と相対する将来の己が姿を夢想する。