キャラ設定中編

なんつうか。
終わりません。
これと同じ状態に、以前ゲヘナセッション用のキャラを作った時になった事がある。
なんだか自分の欠点がわかってきた。
設定書いてるんじゃなくて、SS書いてるんじゃないか?
しかも中途半端なんであまり質のよろしく無いやつ。
まあ、後編で終わるといいなぁ……。
中編

 一度堕ちてしまえばあとは簡単だった。街から街へと渡り歩き、娼婦のヒモになったり、ドラッグに手を出したり、ホームレスのように公園や地下鉄構内で寝泊りをした。結局、流れ着いた街の一つでギャングの殺し屋になったのだ。片目という特徴的な外見から、足がついて過去が明らかになるのを恐れたことと、半ば自暴自棄になっていたため仕事の際に何度か目撃者を皆殺しにしてしまった。その苛烈さで組織も勢力を伸ばしたのだが流石に内部からも批判の声があがり、ここでもマシューは孤立するようになる。
 その街にある新興宗教の一団が入り込んできたのは、見た者の息の根を止める片目の殺し屋の話がまことしやかに囁かれるようになり、様々な尾ひれがついて一種の都市伝説となった頃の事だった。
 おかしな噂が流布したせいで、下手に動きがとれなくなって、組織のシマにある場末の酒場で用心棒をしていたマシューの元に、久しぶりに殺しの命令が来た。この街で着実に勢力を広げていた新興宗教に、組織の若い者が独断で脅しをかけてみかじめ料を要求したのだが、拒否されたどころか脅迫に行った方が監禁され、身柄を取り戻した時には洗脳されて廃人のようになってしまったのだ。
 殺害対象は教祖。儀式の真っ最中、信徒たちの目の前で狙え、という事だった。教祖を殺害し、強硬な幹部を排除して、教団の集金能力はそのまま維持し、内通者に権力を掌握させて利益を得ようという計画である。
 現場の下見に出たマシュー。屋外にある集会場で、月に一度大規模な集会が開かれており、また毎週日曜に小規模な説教が執り行われていた。取り外したスナイパースコープを片手に壇上を見つめる。折りしも説教の真っ最中だった。目標の顔を手持ちの写真で確認し、光線の具合、信者や護衛、他の幹部の立ち位置など様々な条件を分析しながら狙撃に最適な地点を見極める。流すように教祖と周囲の人間たちを見ていたマシューの眼が何かを捕らえた。突如悪寒が走り、理由も無く逃げ出したくなったが、そろそろと戻したスコープの先、数人の幹部たちのかたまりの一番奥に彼女は居た。美しい10代後半の娘。見る者を惹きつけずにはおられない整った顔立ちの中にどこか毒を含んだような雰囲気をはらんだその少女は、口元に冷笑を浮かべて自分たちの教祖に侮蔑の眼差しを投げかけていた。
 彼女の視線がゆっくりと動き……スコープ越しに目が合った。いや、そんなはずは無いと自分にいい聞かせるマシュー。対象からは800mも離れているのだ。例え光を反射したとしても、あちらからはわずかな光点しか確認できないはずで、肉眼でこちらを確認できるわけが無い。だが、スコープの向こう側で、彼女はマシューに微笑んだ。あの時と全く同じ笑顔で。
 恥も外聞も無く、悲鳴を上げてその場から駆け出したマシュー。逃げだしたはずの過去が追いかけてきたのだ。なんとかマンションの自室に逃げ帰り、頭から毛布をかぶって泣きながら安酒を瓶から直接呑む。違う、単なる偶然だ、向こうからわかるはずが無いし、きっと他人の空似だ。だいたいあの少女の顔だって一瞬しか見た事が無いのに覚えてるはずがないじゃないか……。理性は否定していた。しかし、マシューにはわかっていた。彼女があの時の少女の成長した姿であり、あの距離を越えてマシューに気付き、微笑みかけてきたのだと。そう確信し、さらに暗澹たる気分になってますます酒を口にする。しかし酔う事ができなかった。元々あまり強い方ではない。いつもならとうに酔いつぶれて倒れているような量の酒を飲んでも、かけらほどの酔いも覚えず、悪寒が広がるばかりで嫌な汗が止まらなかった。
 マシューの数少ない友人である、ジョージ・オコンネルが訪ねてきたのはそんな時だった。下見をすませた後、ジョージと夕食をとる約束をしていたのだ。同じギャング団におり、マシューの任務を知っていたジョージは、連絡がつかない事をいぶかしんでやってきた。
 部屋の片隅で毛布をかぶって、ガタガタ震えながら命乞いをする準備をしているマシューの姿を見てあわてて駆け寄るジョージ。何事があったのか問いかけるが、マシューの言葉はいっこうに要領を得ない。酒瓶を取り上げひっぱたいてしかりつけるジョージ「だからお前はマンモーニなんだよ!」。マシューの言っている事をなんとかまとめるとこうだった。「昔殺したはずの女に会った」と。無論ジョージはそんな事を信じるはずも無い。しかし、友人をなんとか安心させるために、事実をはっきりさせるべきだと思ったジョージは、マシューを無理やり立たせて事務所へ向かう事にした。一応、例の教団に関して調査が行われており、その結果の資料があるはずなのだ。
 事務所につくと、すぐにジョージの口利きで資料を閲覧する事ができた。マシュー一人だったらおそらく無理だっただろう。資料に目を通して驚愕した。かつて、自分がこんな境遇に陥るきっかけとなった例のカルト教団と何から何まで一緒なのだ。教祖や幹部など構成員は異なるものの、教団の体制、教義、成り立ち、などなどほぼ全てが同じ。教祖が世界の破滅を予言しており、その期日の月日までが一致していたのだ。一瞬目の前が真っ暗になった。巨大な何か、人の手ではどうしようも無い存在に襟首を捉えられ、奈落の底へ引き摺られているかのような感覚に陥った。あわてて組織の上役に教団の危険を訴えるマシュー。彼の過去も一部明らかにし、偶然の一致とは到底思えないと主張した。
 だが、上役はそれをマシューの妄言として片付け、逆にこう言った。「ああ、確かに連中は危険だろう。だが思い出してみろ。お前に与えられた役目はなんだ?教祖と危険な幹部連中を始末する事だろう?連中が何かやる前にお前が片付けっちまうから何も問題はおこりゃしないのさ。いや逆に、何かあるとしても防ぐ事ができるんじゃないか。一体何が気になるっていうんだ?」
 それも一つの道理だった。事が起こる前に全て片付ければ良いのだ。そう自分に言い聞かせる事にした。湧き上がる不安をねじ伏せるために。