短期集中連載「俺と牧夫」第悟回『統率者』

この連載も、もう5回目です。当初の予定では、歴史、クラス、種族、国家などを取り上げようと思っていたのですが、段々めんどくさくなってきたので、種族と国家は中止します。
正直種族なんてデータ上の違い以外はよくわからねえしな……。つかたかが千年経ったくらいで、明確に分化するほどの文化的差異があるとも思えんのだが。エルフなんか、世代だってそんな変わってないだろ。西暦が終わってからすぐに今の種族が作られたとも思えんし、作ってすぐに独自の文化を作り上げられたとも思えん。文化なんてそれこそ、なんで列島に西洋風の日本語以外の言語をベースにしたものができるのか理解できん。しかも黄色人種じゃ無いっぽいしな。そういや、言語だって共通のもの使ってるんだろ?おそらくは会話・読み書きとも共通。それで別文化だと?そりゃ確かに言語に従属するものじゃねえのかもしれねえがよ……。実は物凄い裏設定があるのか?マザーコンピュータが西暦時代に日本原住民が想像していた理想社会を築いたとかいうボンクラ設定とか。考えれば考えるほど気が滅入るのは仕様なのだろうね。やっぱ設定が腐ってるんだよなこのゲームは。世界観が単なる思い付きにしか見えなくて、なんら整合性が取れてないからさ……。などと散々叩きながらも、これらを考えて発表した人間を尊敬しないでもない。私のような常識に囚われた頑固な脳みではとてもマネができません。したくもありませんが。


まぁその腐った設定を如何に読み替えて面白いものにするかという思考実験をやっているのですけどね。
とりあえずネタが尽き次第終わりますから、もうしばらくの辛抱ですので宜しくお付き合いくだされ。




「ええい、俺がこんな所で死ぬ訳にはいかんのだ、貴様ら盾になれ!指揮官の俺様と貴様ら一兵卒では命の価値が違うのだ!!」
「神格機兵、何をやっているッ!!人魔なぞに気を取られるな、さっさと殺してしまえ!!」
「俺にも守るものがあるんだ、俺はその為ならなんだって出来る。自分が生き延びる為にお前達を犠牲にすることだって……」
最初は、その能力を買われたのだと思っていた。
次には、変わらぬ忠誠を求められての事だと思っていた。
統率者に最も要求されるのが、“忠誠心”だからだ。
だが、どうやら彼に求められていたのは、責任感だったらしい。
部下たちに対する責任感、それさえあれば他のものは恐らく不要なのだろう。


統率者は方舟に間するほぼ全権を与えられている。
人類圏最強の兵力を指揮する彼は一国の指導者に匹敵する権力を擁しているのだ。
そのため、統率者には他の覚醒者以上に入念な暗示と薬物による精神支配が行われる。


それでも主たちは奴僕を信用したりしない。
彼は常にその忠誠心を試されるのだ。


彼が方舟を召喚しなければ、融合者はギガースに乗る事すらできない。
彼の指揮の元、兵達は散っていく。
彼が死ね、と命じれば彼らは死ぬしかないのだ。
彼には、部下に反逆の芽があれば事前に摘む事も求められている。
命令に従わない兵は断罪せねばならない。
だから、部下を殺したくなければ彼らに言う事を聞かせなければいけないのだ。
主に対する不満を出させてはいけないのだ。
そのため、主達の代わりに兵達の矢面に立って、憎しみを浴びるのが彼の役目である。
彼が頑迷で、狭心で、権力欲・支配欲に餓えた存在だと皆から思われれば、そうすれば、皆が生きていけるのだ……。


彼の使命はルーベルに仇なす存在の抹殺。
弱き民の守護などではない。
その対象には彼の部下と彼自身も含まれている。
彼のなすべきは部下や仲間を犠牲にしながら、偽りかもしれない思いを守るために戦う事なのだ。


指揮卓にある、彼の指紋と音声認証でのみ起動するスイッチを押せば、即座にギガースのコクピット内でパイロットスーツから毒が注入されて融合者は死に至るだろう。
敵の攻撃にタイミングを合わせてスイッチを押す、戦死に見せかけるのは簡単なことだ。


ただ、これと同じ毒が自分にも仕掛けられている事を知っている。


奴隷と奴隷頭、そこにどれだけの違いがあるというのだろうか?
所詮彼も消耗品に過ぎないと言うのに。
いや、自分の方が他のものよりも立場が悪い。
それと知っていてまだ、隷属せねばならない。
大儀の為と偽ってさらに、仲間を犠牲にせねばならない。
作られた絆と知ってなお、守らねばならない。
他を守るために憎まれねばならない。


「ははは、俺ももっと割り切れたら楽なのだがな……」
「もっと欲が深ければ、自分の地位と役割に満足できるだろうに」
心優しき者は、良心と使命の板ばさみになり、心をすり減らしてやがて身を滅ぼすだろう。
偽りの安らぎに身を委ねながら、彼らの主人と同じく屍の上で権勢を振るえるものこそが統率者たるに相応しいのだろう。
だが覚醒する者は往々にして、そうではない。
人の痛みがわかるが故に、人として高みを目指す事が出来たのだから。


死を迎えたその時こそが、彼にとっての真の解放なのかもしれない。



統率者ですが、こういう「実は善人」というパターンだけでなく、根っからの権力志向で小人物的なキャラもあう役どころだと思います。ケチで口うるさいロード、というのも中々似合ってますね。