短期集中連載「俺と牧夫」第苦回『白い血と革命と』2

12月といえば牧夫の最初のサプリが出ますね。
牧夫というシステムの性質上、追加クラスとかギガースとかは無いと思うので、シナリオと追加データくらいですかね。
後はなんかどうでもいいメタプロットに進展があるとか。
月一サプリでそれはないか>メタプロット
チェスのコマになぞらえてある*1鋼魔がまだ上の方出てないからそこら辺とかなのかもね。
しかし、R&Rだって毎月出るだろうし記事の差別化難しそうだな。
こないだのR&R16の記事は何気に良かったから、あの調子でやってくれるとありがたいのだけど……。

まぁ期待sage




 目的地の1km手前で舟から降ろされ、残りは徒歩で向かう。北島はだだっぴろいところで、障害物がほとんどなく見通しが効く為、飛行物体は目立ちやすそうだけど大丈夫だろうか?と思ったのだが余計な心配だった。方舟はグレゴリアンに作られた物なので、俺達覚醒者じゃなければ認識できない事を忘れていた。俺達の装備とかは見えるんですか?と聞いてみた所、後代に作られたそれほど特別なものじゃないからな、とのこと。
 ちなみに与えられた使命は皆殺し。現地へ行く途中見かけたものは当該村の住人か否かを問わず、姿を見せた瞬間殺害せよとの命令だった。村の手前で二手に分かれる。一方は迂回して風上に回り作戦開始ともに村内へ突入、神経ガスをばら撒く。ほとんどの村人は眠ったまま絶命するだろう。残りは村の入り口で待機、運良く生き延びたものが村から出ようとした場合、その場で射殺する。俺は残念ながら待機組にまわされたので大人しくしていることにする。okuokaとES2がこちらに視線を寄越して副隊長と先輩達についていった。待機組はニガヨモギ以外の通常兵装の準備もしているのだが、風向き次第でガスがこちらにも来るので防護服はつけたままである。ただ、隊長だけは何を考えているのか知らないが、防護服も身につけず、武器も腰に差した山刀と古めかしい手作りのボウガンだけだった。今までほとんど話をした事が無かったので、是非聞いてみたい事があったのだけど、作戦行動中に無駄話をしたら怒鳴りつけられそうだから黙っていた。星を見ていた隊長が、視線をこちらの方へ戻す。作戦開始時刻が間近に迫っているのだ。
 待機組は隊長以下4名、村内には副隊長率いる6名がいる。俺だけはえらくびびってて肩にも随分力が入ってたのだけど、他の先輩達は普段と全く同じ様子なのでいつもこんな感じなのだと思った。ただ、隊長だけはそうは思ってなかったように思える。武装が違ったり、防護服を脱いでいた事もあわせて、後から考えてみると、隊長は最初からわかっていたのかもしれない。今回の任務がいつものようには行かない事を。
 やがて、音もなくその時は訪れた。隊長が手を振ると俺達は二手に分かれて道の両脇にある潅木の陰に潜む。誰も来なければこのままで、村を制圧している味方が戻ってくるまで待ち伏せをするだけなのだが。とても静かな夜だった。潜伏に関しては徹底的に叩き込まれているので新兵である俺の擬態ですら、動物・昆虫が岩と間違えるくらいだ。身じろぎせずに待つ事しばし……。隊長の声が聞こえた「おかしい。火が上がるのが早すぎる」
 村には50戸ほどの住居があり、作戦ではまず神経ガスで住民を殲滅し、それを確認してから村に火を放つはずだった。それが作戦開始から僅か15分で火がかけられている。当然先ほどはそんなものはなかった。異常を察知するやすぐさま隊長から命令が下る。「今すぐ防護服を脱げ。もたもたするな!脱いだらニガヨモギと防護服を置いて、バックパックから通常装備を取り出してついてこい」急いで防護服を脱ぎ、装備を取り出すと、隊長と他の隊員は先に向かっていた。慌てて追いかける俺。
 村に入ると、あちこちに死体が転がり、家が何軒か燃えていた。死体の中には見知った者も居る。とっさに機敏な動作ができなかったのだろうか、新兵二人がやられている。ES2は胸を大きな氷塊で貫かれ、okuokaは股間を持って行かれていた。どうする事もできないと判っていながら駆けつけて声をかける。「お、俺の」「どうした、しっかりしろ!」「な、長くて自慢の立派なフグリが……」と言い残してokuokaは絶命。「いや、お前と俺は遺伝形質ほとんど同じだけど俺のは普通だぞ?」とツッコミを入れたかったが死者にかける言葉ではないので自重した。
 防護服をつけたままだと、視界狭まり、関節の稼動範囲は制限され、なによりも周囲の気配を把握できないので如何に精鋭とはいえ思う様動く事ができない。背後から一瞬殺気を感じ、振り返る間もなくその場に身を沈めて横に転がる。またたきほど遅れて頭部があった所を矢が凄い勢いで通り抜けた。隊長が防護服を脱ぐよういっていなかったら直撃を受けていて、死にはしなかったとしてもかなり不味いことになっていただろう。そのまま物陰まで転がって止まる。周囲を窺うと一軒の炎を上げる建物の周囲に村人?らしき者達が取り巻いており、そこに隊長たちが攻撃をしかけていた。建物の中からも村人に対して銃撃があった。俺も急いで隊長たちの傍によって武器を構え射撃を開始する。
 俺達が装備していた防護服は、基本は抗化学・生物兵器用なのだが、薬品によっては高熱を発するものもあるため、かなりの耐熱耐冷能力がある。そして俺達FATシリーズは環境適応能力が著しく高い。ニガヨモギを火炎放射パックに切り替えた隊員が、手近の民家に火をつけ、その中に生き残った者達が飛び込み、燃え盛る炎を盾としたのだった。俺達にしかできない苛烈な戦法だ。もちろん防戦一方ではない。他の者が屋内から火箋を浴びせ掛け、意識をそちらに集中させている間に、幾人かは民家の二階へ駆け上がり、窓を突き破って足下の一団に自由落下運動。叩きつけられる総重量250kgを越える肉の鉄槌達。これに耐えられるのは深海・真空でも肉体の維持が可能だという遺伝子改造兵くらいだろう。直撃を喰らったならば、頭部を破裂させ手足をもがれ悲鳴をあげることすらできずに息絶える。恐慌を来たす周囲の敵を尻目に自らは何の傷も負わずに悠々と燃え盛る炎に戻っていく隊員。
 実際その光景を目の当たりにしてはいなくとも、幻想的な炎にライトアップされたひしゃげた骸たち、そしてガラスの無い二階の窓と地面に散らばった光を反射するガラスの破片で容易に推測できる。狩人の格技教典でも俺達の第一の武器は体重だと教わるのだから。
 挟撃される形になった村人側は劣勢の色を深めて行った。障害物に身を隠しながらも一人二人と倒れていく。ふと横を見てみると隊長が射撃をやめて周囲を警戒しているようだ。「そろそろ来るな……」と隊長がつぶやいたその時だった。
 俺達が盾にしていたバリケードに鋭い氷の塊が幾つも降り注ぐ。音も無く空中に現れたそれを、俺は慌てて身を潜めやり過ごしたが、バリケードは粉砕され、もうその役目を果たさなくされた。これでES2はやられたのか……。驚きと恐怖が俺の体を縛りつける。心はすぐにでも飛び起き名前のとおりにスマートな鹿が跳ねるように逃げ出したい所なのだが、現実の俺は地面に転がって無様にその身を揺さぶるトドだった。「おい、Deer、いつまでもぶっ倒れてるんじゃねえ!こっちに来い!急げ!」隊長の声で我に返りなんとか体を動かす事ができるようになる。倒れたまま体を転がして出来る限り急いで崩れた馬車の影に入る。
 敵の一団の中に、どう見ても村人には見えないものが幾人か居た。様々な武装を身に纏う異形の者達。俺達と同じくらいの巨体や獣のような身体部位を持つ者もいる。なんだか耳が長いのとか。一瞬敵も味方も銃撃を止める。それに応じて隊長も敵に姿を晒した。「我こそは栄光ある革命軍特務部隊遊撃部部長“太き暁”である。これ以上の抵抗は無意味と知れ。大人しく降伏せよ」敵の巨体がそれに応えた「それは聞けませんよ。降伏勧告なぞ通るはずも無いと知っていて空々しい」「鰐か……」「お久しぶりですね、元隊長」お元気そうでなによりです、と続けたその男の顔が炎の照り返しを浴びて闇夜に浮かび上がる。声と体格から予想できた事だが、俺達と同型種だった。

*1:なんつか、某惨デーのunk漫画に似ててすげえ嫌なんだが。まぁパクリじゃないと言う事を信じたい。人の良心を信じたい