懲りずに続き

無理に面白いものを書こうとすると失敗するものです。
こういうのは波があるのだから。
という訳で淡々と流れを書いていくのみ。
しかし、もうすこし見やすいレイアウトとかないかな。
そこら辺はいくらでも工夫ができそうで。

1−2.家族の肖像2
 母が死んだ後は兄が路上に立った。教育も受けておらず、手に職は無いし、そもそも単純な肉体労働のような仕事すら無い。最初から体を売る以外の選択肢はどこにもなかったのだ。
 母がまだ生きていた頃、兄と二人でよく本土を見に行った。本土とスラムを隔てる人口的な川に釣り糸を垂れながら、兄は恨めしそうに言っていた。「あの向こうでは、何時でも腹いっぱい食い物が喰えて、暖かくて雨漏りもしないお屋敷みたいな家で暮らせる。こんな奇形のザリガニなんて食べなくても済むんだ。」 僕も昔は、あちら側は天国みたいな所で住んでる人たちもみんな満ち足りた生活を送っているのだと信じていた。

 勿論そんな事があるはずも無い。本土からスラム街への観光客というのもいるのだが、彼らは自警団に案内料を払いスラムに来ては色を買う。自警団が経営するその手の店で用を済ませる事もあれば、路上で物色する者も居る。そんな本土からの客はほとんどが度しがたい変態だった。路上で女なり男なりを買うものは、自警団の店などでは商品を傷つける事が許されないので、自分の思うさまをぶつける事のできる弱い立場の人間を求めてきていたのだ。兄は屈強な男たちに組み敷かれ、分厚い化粧をした老婆に奉仕し、体から生傷が絶える事はなく、時折隠れるようにして泣いていた。
 ある時、双子の大男の客に、兄は大怪我を負わされた。客を取ったら同じ人間がもう一人いたのだ。片方は僕を抱こうとしたのだが、兄が身を挺して僕を庇ってくれて、同時に二人を相手にした。彼らは兄を手荒く扱うと満足したのか去っていったのだが、兄は息も絶え絶えでしばらく動く事もできないような有様だった。当分稼ぐ事はできないだろう。家に蓄えなんかない。空腹に耐えかねた僕はスラムにある市場へ行って食い物をかっぱらった。小さなしなびかけたリンゴを一個。それだけ持ち帰って熱を出して唸っていた兄に無理矢理食べさせる。味をしめてもう一度行った。今度は自分の分も取って来るつもりだった。
 欲を出したのは失敗だった。自警団に捕まってしまった。


・・・・・


 そして、僕は奴隷市場に並んだ。